皿にあたるスプーンの音、ワインをつぐ音、グラスが触れ合う音、椅子をひく音、注文をとり終わった給仕の「了解!」という声、Oh là làという驚いた客の声、店の中ではそのすべてのざわめきと音が混ざり合い反響し合っている。席に着き、微発砲の白ワインをひとくち飲む。青カビのチーズと洋梨を包んで焼きあげたパイ。口の中で先ほどの白ワインのまろやかな風味が立ち上がり、チーズと洋梨の調和を引き立たせる。勢いよく給仕係が赤いワインの栓を開く。冷たいもの、熱いもの、口に入れたその瞬間からほろほろととけていくもの、歯ごたえのあるもの、濃厚なドライトマト、香草とクリームをまとったセップ茸、ワインをひとくち飲んでは、ソースをパンに絡めて口に放り込む。この土地の食材の濃厚さもぎゅっと絡める。旨いねえ...マナーはこの際そっちのけ、皿のソースをパンで拭い 取る。葡萄の搾りかすで作った蒸留酒を飲み、胡桃と無花果を頬張る。最後に濃いエスプレッソをいっきに喉に流し込む。
その夜のすべてをのせたテーブルは地上から5cmふわりと宙に上がる。皿やワイングラスがカタカタと揺れて音を立てるが気にしない。座った椅子も宙に浮かぶ。テーブルクロスは風になびき、そのままゆっくり空へのぼる。黒に限りなく近い濃紺の空へ。
わたしたちは相変わらず、見つめ合い、乾杯しては、笑い、会話を続ける。
世界では毎日様々なことが起こり、毎日とてつもない量の情報を耳にし、それでも自分の目の前の日々は変わらない。贅沢な一日も、何もないのに充ち足りた一日も。だからこそもう一度、身体で感じることの基本に戻ってみようと思う。寝ること、食べること、感じること、紡ぐこと、つなぐこと。
愛しい日々の連続を♡
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