匂いを嗅いでは摘む。大鍋でぐつぐつさせてみる。
洗って練って何度も何度も、浸して干して何度も何度も、織ってほどいて折って畳んで何度も何度も、丸めて破って何度も何度も、ぐちゃぐちゃにして...って、そんなふうに虹色を作りあげる。
女の人って複雑な生き物だねえ。と言うと、それってほぼ”重言”だねと彼は苦笑する。
返事を返す、頭痛が痛い、今の現状、馬から落馬...女は複雑...なるほど。
体でわかる満月。遠い東の海からかすかに聞こえる音。体の内側が騒ぐ。やっぱりか。産まれてた。宇宙のサイクルに引っ張られた子。何かの終わりと豊かなサイクルが始まるのは同じ変化の中にある。それから同時にパリから連絡が来る。ピエールアルディのショーウィンドウの前でアイスクリームを食べている2歳。またパリジェンヌがひとり増えたようだ。それにしてもシンクロし合う、女たちのこの繋がりはいったいなんだろう。
昔見た景色をスプーンで掬う。月の光を瓶に入れる。
美しさは、隙のない完璧さの上に存在するのではない。しかしそれは完璧に近いほどに満たされたことだ。
”月の香りを感じたり、黒色の官能を選んだり、揺れるスカートで現実を少し覆って、ひとりにやりと匂いに潜む秘密の記憶を楽しむ。アーモンドを少し齧る。言い訳の赤色を愛する指でぬぐってもらう。お湯の中に体を沈めて、耳までそっと入れる。目を閉じる。ろうそくの光が滲む水の色を味わう。揺れるリズムに身を委ねる。”
愛しい日々の連続を♡
色の旋律
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